二、英語のほかに、異なった文化の言語を少なくとも二カ国語以上学ぶこと。
三、自国または外国(特に発展途上国)での教育、福祉、医療、看護等のボランティア活動を経験すること。
四、国際的視野での「人権感覚」を養い、それを各々の専門職業分野に生かすこと。
しかし、時代は大きく変化しました。欧米先進国はもちろん、国際的にも、患者の人権と尊厳を尊重する医療が定着しています。二十一世紀の医療を担う皆さんに求めるのは、何よりもこの、患者の人間としての権利と尊厳を大事にする、という信念と決意を持つことです。
患者自身のからだについての情報、それに対応しての処置の内容について、患者は真実を知る権利を持っています。もちろん、告げる方法やタイミングなど、日本には日本らしい手順があり得ます。しかし、そのことが結果的に、患者の知る権利を侵害するようなことになってはなりません。
社会的、経済的、政治的に、いま世界は激変しており、全地球はひとつの共同体の様相を呈しています。その中で日本的な価値観や論理をかたくなに主張し、その特殊性を正当化するだけでは、国際社会からの孤立化は免れません。
医学研究などの諸分野でも、狭くなる地球化時代の中で、共同体の一員として日本が世界に大きく貢献するためには、私たちもまた、未来に向けての新しい価値観を人間としての権利と尊厳とを中心に作り上げなくてはならないのです。医療専門家中心の権威主義的な発想を前提にした旧来の医の倫理は、いまや「患者中心」の自己決定権を尊重するバイオエシックスへと変革をとげています。
はじめに挙げた四項目を実践する中から、日本でのこのような新しい発想への転換が起こることを、私は確信しています。
患者の人権と尊厳をより大切にする医療
木村利人(早稲田大学人間科学部教授)
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はじめに、私が世界各地の大学で学生たちに訴え続けているメッセージを、日本での二十一世紀の医療を担う皆さんにも贈りたいと思います。
一、自国の歴史や文化を正しくかつ批判的に学ぶこと。
わが国のみならず、諸外国においても長いあいだ医療提供者側の絶対的権力が患者を支配し続け、「患者のために」という大義名分のもとに、ほとんど説明や同意の無い医療行為が当然のこととして行われてきました。