私は、このバイオエシックス夏期特別ゼミ研修に参加するまで、約4週間にわたり、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)でPractical Englishの授業を受けていました。当然、そこでは多くの外国の友人達ができたのですが、彼らと会話していて、まず話題になるのは大学におけるお互いの専攻のことでした。
そこで私が「私は人間科学部の学生で、専攻はバイオエシックスです」と言うと、彼らは決まって「Is it a near-medical science?」と問いかけてきたものでした。私はその度に少々困ってしまいましたが、「It's a comprehensive human study!! For example, HIV problems, abortion, in-vitro fertilization...」と、つたない英語で何とか説明して、彼らも少しは分かってくれたようでした。私がそう言うと、いつも彼らは異口同音にこう答えるのでした・・・
"Oh...I think, it's so difficult!!"
バイオエシックスは確かに難しい学問です。医学にも隣接していますし、他のあらゆる学問にも関係が深いものです。この点、バイオエシックスは将来において、まさに人間科学部のIdentityを定義づけ、これを広く世に示してくれる学問である、と私は常日頃から期待しています。今回のゼミ研修では、その難しいバイオエシックスの、幾つかの側面を実際に垣間みることが出来て非常にラッキーであったと思います。
しかし、今回の研修で私が実際に学ぶことが出来た医療、あるいは福祉等のテーマどれ一つを取ってみても、計り知れないほど多くの問題が隠されています。少なくとも私自身にとっては、バイオエシックスは勿論、人間科学を本当の意味で理解して、体系化することはまだまだ先のことと思われます。
しかし翻って考えてみて、バイオエシックスの難しさの中に、極めて人間的で血の通ったパイオニアの精神を見い出したことは、やはり今回のゼミ研修の一番の収穫であり、そのことは大いに私を勇気づけるものになってくれました。
「人間」とは非常に難しいけれども、とても面白いものです。従って、その「人間」を扱って究明していくバイオエシックスも、きっと難しいけれど面白いものにちがいない、と今回のゼミ研修を通して再認識したのでした。
メールはこちら(早稲田大学大学院人間科学研究科 かわはらなおと宛) naox@human.waseda.ac.jp