最近、環境問題に関して、様々な報道がなされているとともに、人々の自然環境に対する関心も高まってきている。しかしながら、それらは、ほとんどと言って良いほど、"自然保護"の立場でしか述べられておらず、あるものは人間の存在までをも否定しかねないほどである。
しかし、これほどまでに自然や地球の環境に興味を持つのは、先進国の特徴でもある。我々は経済的には、かなり"ゆとり"のある国民である。それだからこそ、自然や地球のことについても考える"ゆとり"があるのだと思う。
けれどもそれは、人間がより良く暮らすために考えられてきた技術化や、機械化の成果として持ち得たものである。したがって、今になって、これまでの開発や合理化を全面的に否定するのは、少しおかしいのではないだろうか。
この疑問を元として、開発の立場と環境の立場をそれぞれ調べ、環境倫理の立場から、両者について考えてみようと思う。
◇第1章 リゾート開発の必要性と利潤点
開発にあたっては、様々な利点や必要性があることを考えた。
よって、日本においては、今後ますます大きな問題となる"長寿化現象"や、今までにも優れるとも劣らない"科学技術の進化"、そして、それに伴う国民全体に及ぶ"収入増加"といった社会的な現象や、リゾート開発が必要であるという地域の問題について調べ、リゾート開発が、その場所へ行く者に"ゆとり"をもたらし、さらに、そこに住む人々にとっても欠くことのできない生活環境となっていることを考えた。
今まで閉ざされていたとも言える地域産業が発展していくことによって、住民にもたらされる恩恵は絶大なものである。今までにも多くの公共投資がなされてきたにも関わらず、芳しい結果とならなかったことを思うと、リゾート開発が地域の発展には欠かせない経済政策であることが理解できる。
◇第2章 リゾート開発による自然環境の破壊
開発にあたっての問題は、主に環境破壊であることを焦点とし、その開発によってもたらされた様々な被害などを調べた。
特に、最近問題の多いゴルフ場造成については、人間の生活水にまで影響が心配される農業についての害や、それに対する各省庁の対策を記した。また、森林を開拓していくにあたって起こる問題も多く、洪水流量の増加や、地下水の減少といった、水量の問題も出て来ており、開発された森林では生態系の破壊もひどく、国の天然記念物である野鳥類にも危機が迫っている。これらに関しても、それに関わる各省庁の見解を記した。
また、近年、リゾート開発ほど永続的で大規模ではないが、各地で行われている博覧会も、自然環境の破壊につながることが多く、問題を孕んでいる。人集めのためとはいえ、生態系にまで無理をきたすものも多く、本来の趣旨や目的が、企業による利益の拡大へと転換されている場合も多く、知らず知らずのうちに、自然にとって取り返しのつかない状態になっていることもある。
◇第3章 環境倫理について
自然を開発していく"人間"と、されていく"自然"の両者の立場を、古代オリエント時代から、古代ペルシャ、古代ギリシャ、さらにキリスト教に至るまでの人間の自然に対する考え方を、歴史的変遷から探り、日本における自然観にも、それ独特のものがあることが分かった。
また、それによって自然環境と人間環境の在り方が、支配する側には"人間"があり、支配される側には"自然"が存在する、という形に集結した。そして、この関係は、今ここでいくら自然保護を叫んでも、結局それ自体も、人間の身勝手な支配に過ぎないのである。
両者の立場の両立を図ることは、人間が遂行しなければならない義務であり、モラルとして今後も考えていくべき問題である。