医療システムの役割と構成についての提言
J0B107-6 滝口正信

Japanese | English

抄録 abstract
 これまで、私たちの心の中には、医療は特別なものであるという意識があり、他の分野との比較はあまりなされていなかった。そのため、医療が世間から孤立しがちであった。しかし、患者と医療関係者の真の幸福を考えるならば、それは見直さなければならない。そのために、現在どのような実態になっているかを、文献中心に調査した。
 その結果として、
 1. 医療側の選択の幅の拡大
 2. バイオエシックスへのソフトライディング、
の2点が世間と医療との敷居を下げるきっかけになると確信した。

研究目的 purpose
 医療システムのあるべき姿とはどのようなものか。医療システムと患者の関係において、精神的負担、経済的負担、周囲の対応、の本来あるべき姿はどのようなものかを現状と将来の調査によって、明らかにすることを目的とする。また、同様に医療システムと医療関係者において、その精神構造、責任、技術水準、そして医療システムと経営において、収支構造、地域バランス、分業化、対慢性症についても、その本来あるべき姿を現状と将来の調査によって、明らかにすることを目的とする。

研究方法 method
 文献調査

研究結果 results
 【医療システムとリエンジニアリング】
 研究結果は、大きく3つの要素に分けられた。
†医療関係者の意識改革
   含まれる項目
#満足の提供、
 現状/医療行為に満足の関心が集中
 将来/医療環境全体から満足が提供
#情報提供、
 現状/医療サービスを受ける側と与える側の医療知識格差が大きい。
 将来/通信技術の進歩による知識の均質化により知識の差は少なくなる。
#人材活用、
 現状/医療システム内の権限の偏りと、環境の未整備が人材活用を阻害
 将来/他産業の環境との比較により改善
†医療コストの実態
   含まれる項目
#診療報酬、
 現状/金銭の出入りが一般からは把握しにくく、非常に不透明な構造
 将来/ボーダレス環境の成熟により国際比較による改善
#薬事、
 現状/医薬未分離のため、曖昧な薬事が行われやすい
 将来/医薬分業の効率性と、業務の過多防止のために改善
#医療コストの対象別比較、
(地域比較; 田舎と都会の場合・システム比較; 大規模施設と小規模施設の場合)
 現状/全般に、特殊なコスト感覚が常識である
 将来/それぞれの分野で従来とは逆な分化、融合が進み不具合の調整にはいる
†これから必要なインフラ
   含まれる項目
#情報通信とのかかわりの実態、
 現状/技術発展のスピードがはやすぎて、医療システムにとって馴染めない
 将来/技術のもたらす便利さが普及を促す
#医療システム分業化の実態、
 現状/社会構造の変化に制度が対応し始めたところ
 将来/社会構造に適応した制度の便利さがさらに制度の改善を促す

考察 discussion
 【快適な医療システムの提言】
「心身がどれだけスムースに医療システムに参加し、癒されるか。」に要約される。
   含まれる項目
#すべてにわたる選択の幅の拡大、
 常識に流されず、自らが必要とする選択肢が存在しなければ創造し、情報に敏感であることが、重要であると考える。
#バイオエシックスへのソフトライディング、
 「自己決定」による「いのちの認識」と自己内部のバランス感覚を日常的に発揮することが、すべての鍵になると考える。

結論 conclusion
 医療システムの役割と構成は今後、劇的な変化を遂げることは確実な情勢である。その変化の中で、医療に関係するすべての人が望むべき医療システムを形成するには、1. 有形無形のさまざまな技術を駆使して従来以上に医療システム上の選択の幅を拡大する、2. 自らの内部的なバランス感覚と「自己決定」の意思のもと、日常的な中での「いのちの重要性」を核として、いろいろなことに興味関心を持つ、 という2つのことが必要である。


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