<第一部> ナチス政権下における医学的人体実験
1. 気圧実験
高高度やそこからパラシュートで降下したときの人間の耐久性と生存の限界を調べるため気圧を自由に変えられる部屋で行なわれた実験。
2. 冷水実験
無傷で海上にたどりつくが寒さのために死亡するドイツ空軍のための飛行服を作るために行なわれた実験。
3. マラリア実験
マラリアの予防注射を開発するために被験者に故意に感染させて1200人以上の犠牲者を出した実験。
4. マスタードガス実験
マスタードガス(毒ガス)によって引き起こされた負傷の最も効果的な治療の仕方を開発するための実験。
5. サルファ剤、その他の薬品、骨、筋肉、神経に関する実験
サルファ剤の効果とドイツ兵士が負傷した際に行なうための骨、筋肉、神経の再生と人から人への移植のために行なわれた実験。
6. 海水実験
海で遭難する兵士のために海水を飲めるようにするための方法を開発するために行なわれた実験。
7. 黄疸実験
南ロシアで流行しドイツ軍に大きなダメージを与えた伝染性の黄疸に対する予防注射の開発のために行なわれた実験。
8. 断種実験
ナチスの大きな政策である劣等人種の撲滅のために行なわれた実験。実に様々の方法で行なわれた。
9. チフス実験
発疹チフスとその他の予防接種を開発するために行なわれた実験。
10. 猛毒実験
毒の詰められた弾丸を撃ち込んでどのような経過で死亡するかを観察した実験。
11. 焼夷弾実験
リンによる火傷の最も効果的な治療法を開発するための実験。
12. その他の実験
・仮病対策の実験
・頭蓋骨と骨の収集
・電気ショック実験
・子宮癌の早期診断法の実験
・メンゲレの実験
・肝臓の萎縮に関する実験
・血液確定実験
・敗血病実験
戦後のナチス・ドクターたち
以上にあげた実験を行なった主要なナチス・ドクターの多くが死刑となり、ニュールンベルク裁判では徹底的にそれらに対する罪が裁かれた。
アイヒマンの実験からの考察
人間とは権威に弱い動物であり、人体実験を阻止する際に人間の良心とか道徳観に頼ってはいけない。日本でも「ヒトを対象とする医学実験」の立法やガイドラインが必要である。また人体実験によって得られた結果によってたとえ多くの者の命が助かるとしても、それが被験者の同意を得られない実験であるのならその様な実験は行なうべきではない。
<第二部> ニュールンベルク倫理綱領からインフォームドコンセントへの流れ
患者の権利はニュールンベルク倫理綱領、ヘルシンキ宣言、リスボン宣言を経過して確立されてきた。しかしその一方でアメリカでは社会的弱者に対して非人道的な実験が行なわれていたことが発覚し、アメリカ市民の提案により医学実験の審査のための機関であるIRBができた。このようにして真のインフォームドコンセントがアメリカでは認識されたのである。
現在の日本におけるインフォームドコンセント
日本ではまだ医者によるパターナリズムが発揮されていて真のインフォームドコンセントが行なわれているとは言えない。インフォームドコンセントによる恩恵を受けたいのなら、医者と患者双方による意識の改革が必要である。