終末期医療と人間の尊厳
J1B023-2 大和田絵理

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はじめに
 終末期、終末期医療はそれぞれ英語でターミナル、ターミナルケアといい、その英語のままでも今日広く使われている。その定義をするのは難しいが、狭義の終末期は医療により健康を回復する見込みのなくなった、死ぬ前の比較的短期間をいう。
 医療技術の進歩により様々な治療の選択肢、可能性が示される現代においては、いのちの終末期をどのように過ごすかの判断を下すことは非常に困難である。しかしこの時期を人間として充実して過ごしたいとは誰もが願うことであり、また、そうすることは当然のことである。しかし現在のわが国において行われている終末期の医療は、果たして私たちの満足のいくものなのであろうか。

第一章 セントエリザベス病院を見学して
 1993年の夏、ゼミの活動の一貫としてアメリカ、ワシントンD.C.にある精神病院、セントエリザベス病院を見学した。そこで行われている患者の権利を守る活動に感銘を受け、果たして私たちの国である日本においては、患者の権利はどこまで重要視されているのか、特に人間として最も大切な時期の一つである終末期においてはどのような現状にあるのかに非常に興味を覚え、それについて調べてみようと思った。

第二章 癌の終末期医療
1. 癌告知
 癌の終末期医療を考える際にまず避けて通れないことは、癌であることを患者に伝えるか否かである。現在日本では患者本人には告知せず、家族と協力して最後まで隠し通すことがほとんどである。日本には国民の性質から告知することは難しいとも言われているが、本当にそうであろうか。

2. 癌の延命治療
 告知した後、自分の病状を知った患者は残りの人生をどのように過ごしていくのか、そして医療者は患者をどのようにサポートしていくべきであるのかについて考えてみた。

第三章 延命か尊厳死か
1. 延命治療
 近年主張されている終末期医療の目的はただ寿命を延ばすだけではなく、苦痛緩和と患者の意思とを尊重した終末期と死の在り方をつくっていこうとするものである。しかし現場では最後まで延々と延命治療が続けられている。医療の主人公であるはずの患者が延命措置を拒否した場合、その意思はどこまで尊重されているのか。

2. 安楽死運動の歴史
 世界的に見た安楽死運動のの歴史について述べる。

3. 日本尊厳死協会について
 尊厳死活動を行っている日本尊厳死協会の歴史についてふれる。

4. 尊厳死運動に対する誤解

5. 立法化を阻止する会

6. 安楽死と人間の尊厳
 植物状態の人間について特に取り上げ、安楽死の是非について論じる。安楽死を行う場合のガイドライン、リビング・ウィルの必要性についてふれながら、日本における安楽死の在り方の方向について考える。特に植物状態の患者の場合、その介護の特殊性からも考えていく。

おわりに
 終末期医療において最も大切なことは、患者の自己決定権とクオリティ・オブ・ライフを何よりも重要視することである。そして本当に必要なことは患者がそれを望まない限り無意味な延命治療は行わず、激しい苦痛などの充実した終末期を妨げる要因を取り除くことである。近年病院で死を迎える人の割合が急増しているが、最も自分らしい週末を迎えたいのであれば在宅ケアを行うことが望ましい。家族の協力と十分の資金があれば、在宅で、無意味な延命措置は行わず、充実した末期医療を受けることは可能である。
 そのためにも今後は在宅治療を援助する公的、私的な組織のさらなる充実が求められる。


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