第1章 血友病とエイズ
この章では、血友病とその治療法について、そして、日本とアメリカにおけるエイズの発生から加熱製剤の認可までの歴史的な流れを説明し、日本とアメリカの対策を比較している。
第2章 国、製薬企業、医師の対応
この章では、国、製薬企業、医師がそれぞれ、いつ頃から、血液製剤の危険を知っていたか、そして、それぞれどのような対策をし、どこに問題があったのかを指摘している。さらに、国と製薬企業、医師と製薬企業、血友病患者会と製薬企業の癒着の構造、そして、第5節においては、日本で過去におこったサリドマイド、スモンの2つの薬害を検証し、国、製薬企業、医師の対応を薬害エイズの場合と比較している。
第3章 HIV訴訟
海外においてのHIV訴訟のなかで、イギリスとフランスの2国を例に挙げ、この2国の訴訟の流れと判決、さらに、日本の訴訟を検証している。また日本において1995年10月6日に出された和解案とその問題点について説明している。
第5節においては、血友病エイズ感染者を救済することが、日本においての本格的なエイズ対策の第一歩になり、国民の理解を深めることになることを指摘している。
第4章 バイオエシックスの観点から
バイオエシックスの観点から考察するのは次の4点、(1)インフォームド・コンセント、(2)パターナリズム、(3)感染告知、(4)医薬品情報の公開である。この4点において、薬害エイズの場合はどこに問題があったのかを説明している。また、(4)の医薬品情報の公開については、どのようなシステムが検討されるべきかも指摘している。
おわりに
薬害エイズは、国、製薬企業、医師の対応の遅れ、情報の隠匿から生じたのは明白である。しかし、その根本にあるのは国、製薬企業、医師に患者中心の医療という考えが全くなかったことである。医師のパターナリズムや医師と患者の上下関係の中では、インフォームド・コンセントは存在しないし、告知の問題に関しても、医師と患者が相互に平等の立場でない、一方的な告知はありえないのである。患者の自己決定を尊重したり、少しでも危険があるという情報を患者に与えていれば、薬害エイズの被害の拡大は防げたはずである。この薬害エイズによって、日本が医療倫理についていかに遅れているかを明らかにしてしまったのである。
国、製薬企業、医師が責任を認め、患者を救済し、本格的なエイズ対策を行うとともに、患者中心の医療、患者の人権と尊厳を支える医師、患者関係を作りださなければならない。