日本医療におけるがん告知への道
J94B131-7 三上真雄子

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1. はじめに
 患者が自分自身の生を全うするために、がん告知は必要不可欠である。告知の後にはじめて、本当の意味で自分の生を振り返ることが可能だと思う。
 医療先進諸国では告知は当然のこととして受け入れられており、患者を取り巻く医療その他の細かなケアが確立して、行き届いている。理想的環境の下に告知がなされている。
 日本では、1960年代以降、がん告知の問題が議論されてきた。日本特有の複雑さが絡み実現の道が険しかったが、それは取り巻く環境、医療その他のスタッフのケアが原因なのである。患者とその家族、医師、看護婦、ケースワーカー、牧師らが一体となり、患者を包むような環境の中で、協力し合い、信頼し合う、充実したケアのもとに、はじめて告知が可能であり、自然なのだ。日本ではそういった理想的環境が出来ていない。
 告知は患者本人の生の質に関わる重要問題であり、それなくして患者の本当の生はあり得ない。日本医療の改善こそが、がん告知浸透の道を切り開くのである。

2. 告知の現状
 医療先進諸国では告知は一般化し、その後のケアも確立している。日本では、「ケース・バイ・ケース」で告知に対処している。迷いや問題は否めない。告知すべきと考えながらも、患者の状況により告知するかどうか検討するのが日本の現状である。

3. 日本医療における告知のメリット・デメリット
 告知はメリット・デメリットを合わせ持つ。だが、メリットは極めて大きく、患者にとって告知は不可欠といえる。

4. ホスピスについて
 告知とホスピスの精神は密接なつながりをもつ。ホスピス・ケアとは、施設や技術、治癒中心の発想ではない、患者本人にとって最適の生を支えるという、ペイン・コントロールをふまえた支援の精神を主軸としている。

5. 告知浸透をめざして -現代医療の改善-
 告知浸透は必然の道である。それには現代医療に高い倫理性がもとめられる。そして、医療チームが一体となって協力しあう支援態勢が必要だが、そのためには人的資源が従来の何倍も必要となる。患者自身も高い意識をもつべきである。

6. 告知の意味
 告知のもたらす意味は、患者の生の充実である。患者の心はナイーブで、弱く、そして強い。患者の心を最重要視し、それには告知が原点となる。

7. 医療の進むべき道、患者の進むべき道
 現代の医療の改善をめざすには、医療を変えようとする医師側の倫理性の高い意識、力、そしてそれとともに患者側の積極的な意識が重要となる。医師と患者の信頼関係が大切である。

8. 結論・考察
 がん告知の浸透、一般化が望まれる。しかし現状として、日本特有の、技術ばかりが先行して倫理性がそれに伴っていかない医療現場に問題があるのではなかろうか。
 だが、医療は変わりつつある。医師、患者ともに協力し合い、主張し求め合う関係に変容してきている。告知を正しく実現するために、追求するにあたり、バイオエシックスの原則を踏まえた国民の医療に対する意識、関心の積極的表明と、変革を求めての運動が重要となる。


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