第一章 プライマリ・ケア
日本の身近な医療の中で、今一番欠けているものがプライマリ・ケアである。3次医療まである医療体制システムの底辺であり、基礎であるプライマリ・ケアは、日本でどのように捉えられているのだろうか。各国の医療体制と、その中でのプライマリ・ケアの位置関係の違いを調べてみた。
また、1978年に「2000年までに世界のすべての人に健康を」というアルマ・アタ宣言が、WHOで掲げられ、その目標に向かって国際医療や各国のプライマリ・ヘルスケアはどのような動きを見せているか、また日本のプライマリ・ケアとどのような違いがあるか比較してみた。
第二章 プライマリ・ケアと医学教育
プライマリ・ケアの医学教育における問題は、少なくない。まず、プライマリ・ケア自体の概念の不明確さ、専門性のあいまいさ、教育体制の未熟さ、そして現実に教育スタッフを確保することの困難さが挙げられる。
この解決のために日本の医学教育はどうあるべきか。また、アメリカやイギリスで行われているチーム医療を見習って、医師だけではなく看護婦や地域住民との協力によって医療体制を確保するということも必要である。
第三章 プライマリ・ケアと患者教育
最初に患者が出会う医師は、プライマリ・ケア医であって、専門医ではない。患者の治療は疾病を取り除くだけではない。その疾病の原因にさかのぼって対処することである。
患者の自立性や自己決定権などは、人権が保障されている国であれば、当然のことであり、科学技術が進歩し、臓器移植や遺伝子組み換えが可能になっている現在、最も大切なことである。
また、地域医療や自分たちで血圧を測定するなどの患者自身が積極的に医療活動に参加することが、今後の医療にあるべき姿といえる。
第四章 プライマリ・ケアのこれから
プライマリ・ケアは、21世紀の医学を見通すものであるといえる。だから専門化され、分化されたものが発達してくるのかもしれないが、それを統合して、1人の人間と医学がどう対面してくるかが問題になってくる。分かりやすくいえば、医師と患者の間にいかに人間的な信頼関係が築きあげられるか、ということにつながってくる。
バイオエシックスとの共通の問題点でもある「医療は誰のために何のために」を改めて考え直し、医療における専門化の傾向を変えることが、これからのプライマリ・ケアの発展において重要な事といえる。
終章
本論文における考察を通し、グローバルなバイオエシックス的発想が必要であることが明確となった。日本のプライマリ・ケアは、「こころのケア」が中心になっている。そのためには、まず人々 (患者、住民) の健康維持、健康増進のために、あらゆる手段を用いて、教育に努めることだと思う。
自分の体について、心身ともによく知り、そのことについて話す場を持つことが必要である。インフォームド・コンセントが認知され始めて久しいが、プライマリ・ケアにおいても、まずは人々の生活にこの内容を定着させることが必要である。