「ヒポクラテスの誓い」

 「医神アポロン (1)アスクレピオス (2)、ヒギエイア、バナケイア及び全ての男神と女神に誓う、私の能力と判断に従ってこの誓いと約束を守ることを。
 この術を私に教えた人を我が親の如く敬い、我が財を分かって、その必要あるとき助ける。その子孫を私自身の兄弟の如くみて、彼らが学ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。そして書き物や講義その他あらゆる方法で、私のもつ医術の知識を我が息子、我が師の息子、また医の規則に基づき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。
 頼まれても、死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
 純粋と神聖をもって我が生涯を貫き、我が術を行う。結石を切り出すことは神かけてしない。それを業とする者に任せる。
 いかなる患家を訪れるときも、それはただ病者を利益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。女と男、自由人と奴隷の違いを考慮しない。医に関すると否とに関わらず、他人の生活についての秘密を守る。
 この誓いを守り続ける限り、私は、いつも医術の実践を楽しみつつ生きて、全ての人から尊敬されるであろう。もしもこの誓いを破るならば、その反対の運命を賜りたい。」


(1)アポロン (Apollon)
 ギリシア神話の神。ゼウスとレトとの子。アルテミスの兄弟。美しく男性的な神で、音楽・医術・弓術・予言、また、光明の神とされ、太陽と同一視される。
(2)アスクレピオス (Asklepios)
 ギリシア神話の医術の神。アポロンの子。起死回生の術をよくした。なお、「アスクレピオスの杖」という蛇の巻きついた杖は、医術の象徴とされる。

資料出典 (稲葉裕, 野崎貞彦編:新簡明公衆衛生第2版, 南山堂, 1996., p. 299. より)


なお、原文の英語訳版の全文掲載サイトはWWW上に数多く存在しております。以下は、その代表的なものですので御参照下さい。
  • CIRP (Circumcision Information and Resource Pages),
     Oath of Hippocrates (circa 400 B.C.):http://www.cirp.org/library/ethics/hippocrates/
  • なお、上記CIRPによる "Readings in medical ethics" の頁には他の重要な各種倫理綱領が全文掲載されております。
  • ENGLISH TRANSLATION OF GREEK TEXT, "The Hippocratic Oath"http://www.csun.edu/‾hcfll004/hippocr.html
  • その他の古代ギリシア及びラテン出自の英語訳文献 (ANCIENT TEXTS) はこちらを御覧下さい。
     この英語文献は、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校, John P. Adams 教授のWEB SITEに掲載されているものです。

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