ロンバルディ癌研究センターを見学した後、私たちはジョージタウン大学ケネディ倫理研究所を訪問しました。インターネットで、いつも拝見していた憧れの「ケネディ研」に今いることは感激ひとしおのことでした。
ここでは所長になられたProf.Robert veatch先生自ら講義をして下さりました。この講義においては、PhysisianによるAssist-suicide(自殺介助・幇助)の問題が取り上げられました。
1970年代から特に患者の「Life to refuse(拒否権)」の問題が盛んに論議されるようになり、1990年代になって、ようやくMercy Killing (患者本人の意思を尊重して、直接的あるいは間接的に医師に命を終わらせてもらうこと)が一概に「悪」と決めつけられないのではないだろうか?といった当然なる疑問が重要視されるようになりました。例えば、この問題における州議会の賛成票率をみても、1991年・ワシントンD.C.では46%、1992年・カリフォルニア州では50%と増加傾向にあります。
また、ミシガン州で起きたケボキアン医師によるアルツハイマー患者の自殺幇助事件は、この論議に一石を投じることとなりました。彼は実に3回にわたって殺人罪で告訴されましたが、彼のIrregal but Innocentの精神は、依然として患者がpassivelyかつactivelyに死ねない現代医療が孕む問題点を、より強く浮き彫りにしたように感じられました。
続いて、私たちは医学部病院にある新生児センターを訪れました。ここではDr.Sivasubramanian先生が直接、講義をして下さいました。彼の話によれば、このセンターには「Neonatal/Peediatric Ethics Committee」というものが設けられていて、「Define Medical Facts→Define Ethical Questions→What are the Questions?」のMethodologyにおいて、Ethical Dilemmaの様々な問題がDiscussionされているとのことでした。
また、Ethical Ramification(倫理の細分化)は新生児センターにおいても例外ではなく、Sex-selectionの問題、Abortionの問題、Family planningの問題、 Gene manipulationの問題、 In vitro fertillization(IVF)の問題、さらに1日に1500$〜2000$もかかるといわれる小児医療におけるEconomics of careの問題等、解決が困難な課題は山ほどもあるということを知らされました。
また、これらの問題にはPoliticsやRelligionsの問題も深く関わっているということで、改めてPerinatal/Neonatal MedicineにおけるEthical Dilemmaの深刻さを感じざるを得ませんでした。
しかし、講義においてDr.Sivasubramanian先生は、とにかく「子供のBest-Interest」を最優先して医療を行うことがポイントであると言われました。どんな子であれ、両親が望んだときに生まれてくる子は幸せでありますが、その子が生まれてきたことを周囲が素直に喜べる・・・そのような環境が整えられる日が少しでも早く来ることをを願わずにはおれません。
(早稲田大学大学院人間科学研究科 かわはらなおと)
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