修論「高齢者ケアに関する政策決定過程をめぐるバイオエシックス的考察」注釈
(第2章:高齢者ケアに関する政策決定過程をめぐる諸問題の概要及び考察/2-1. 高齢者福祉の諸問題の概要とバイオエシックス的考察)
56 総理府社会保障制度審議会事務局, "社会保障制度のあらまし", '老人保健・医療・福祉のあゆみ' (last modified Apr, 26, 1999) <http://www.sorifu.go.jp/hoshou/whitepaper/summary/2-9-1.html>
57 同上, <http://www.sorifu.go.jp/hoshou/whitepaper/summary/2-9-1.html>
58 厚生省社会・援護局/児童家庭局監修:Ibid., p. 578
59 同上, p. 578
60 日本弁護士連合会:1996,『高齢者の人権と福祉 - 介護のあり方を考える』, こうち書房, 東京, pp. 39-40
61 憲法25条第1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」第2項「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
62 憲法13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
63 同上
64 上掲書 p. 36によれば、高齢者の老人病院における処遇について「大部屋で、パジャマなど同じ衣服を着せられた高齢者が、他人の見ている前でおしめを取り換えられたり、徘徊する患者を防止するためと称して、ベッドに "しばりつける" という措置がとられるようになった」と述べられている。また、「老人病院の多くは、従来は結核患者の患者を扱っていた病院であることもあって、郊外にあるのが通例であり、そのせいか、家族も一般病院のようにお見舞い等で出向くことが出来ない場合が多く、病院でどんな治療がされているのか不明であることが多い」という問題が指摘されている。なお、老人病院は、本論において後述する「老人保健法」によって設けられたものである。老人病院は、一般医療機関と対比して、医師、看護婦等のスタッフが軽減され、とりわけ、特例許可外の老人病院の高齢者に対する不十分な医療が懸念された。それを端的に示す例として、上掲書では「老人病院に入れられたため、非人間的な扱いをされ、痴呆が進行したという例がたびたび報告されている」と述べられている。
65 安易な「有料福祉と受益者負担」の考えの導入を、上掲書は「所得の再分配を通じて実質的な自由と平等を実現しようとする、憲法第14条 (すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない) と第25条の目指す社会に逆行するもの」と指摘し、「新たな貧富の差を公の責任のもとで作ることになりかねないものがある」と問題提起している。これについては、施設入所をめぐる機会の平等と、配分的正義の問題をめぐって、本論中で後述することとする。
66 平成6年法律56号/平成9・12・17・法律124号/平成11・7・16・法律87号 (未)/平成11・12・8・法律151号 (未)
67 老人福祉法第5条の2第1項によれば、"この法律において、'老人居宅生活支援事業' とは、老人居宅介護等事業、老人デイ・サービス事業、老人短期入所事業及び痴呆対応型老人共同生活援助事業をいう。" なお、介護保険が導入されると、これらの老人居宅生活支援事業の多くは、保険に基づいてサービスを提供する事業となる。
68 老人福祉法第5条3項 この法律において「老人福祉施設」とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム及び老人福祉センターをいう。なお、同法の施行と同時に、「養老院」(かつて「救護法」や「生活保護法」において、老衰のため独立して日常生活を営むことの出来ない高齢者を収容して、生活扶助を行うことを目的とした養老施設) が「老人ホーム」という名称に変更された。
69 柴田嘉彦著:1998,『日本の社会保障』, 新日本出版社, 東京, pp. 81-83
70 柴田嘉彦著:Ibid., p. 81 (資料:厚生省大臣官房政策課『社会保障入門』)
71 老人福祉法第5条 の3 (定義) "この法律において、'老人福祉施設' とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター及び老人介護支援センターをいう。"
72 柴田嘉彦著:Ibid., pp. 83-85
73 柴田嘉彦著:Ibid., p. 84 (厚生省社会・援護局/児童家庭局監修:上掲書を参照の上、筆者が一部加筆)
74 基本利用料の2倍。1997年で月およそ33・3万円程度。
75 減免額の3分の1は国、3分の2は都道府県等が負担する。
76 東京都社会福祉協議会・老人福祉部会研修委員会・看護婦研修会:1990,「老人ホームへの入所措置等の指針について」,『老人福祉施設における看護業務マニュアル - 老人看護の原点を見つめて』, 東京都社会福祉協議会, 東京, pp. 101-103 1987 (昭和62) 年1月31日 社老第8号 各都道府県知事・指定都市市長あて 厚生省社会局長通知) 同通知により、養護老人ホーム及び特別養護老人ホームへの入所措置の基準等の指針が定められた。その内容は、(1) 入所措置の目的、(2) 福祉事務所長への委任、(3) 入所判定委員会の設置等、(4) 老人ホームの入所措置の基準、(5) 措置の開始、変更及び廃止、(6) 65歳未満の者に対する措置、等で構成される。
77 総理府社会保障制度審議会事務局, 『社会保障制度のあらまし』,「老人福祉の状況」(資料:厚生省大臣官房統計情報部「社会福祉施設等調査報告」) (last modified Apr, 26, 1999) <http://www.sorifu.go.jp/hoshou/whitepaper/summary/2-9-4.html>
78 岡本祐三:1996,『医療と福祉の新時代』, 日本評論社, 東京, pp. 92-93 同書によれば、こうした「入所判定委員会」が、1〜2ヶ月に1回くらいしか開かれない事も、問題として挙げられている。
79 同上, pp. 92-93 なお、同書によれば「'措置' でないはずのホームヘルパーを派遣してもらおうとしても、'民生委員' の '意見書' が要る地方だってめずらしくない」と指摘されており、「福祉サービスとは、なんとまあ利用しにくくしてあることか」と嘆かれている。
80 本田典子:1995,「福祉の措置と手続き」,『福祉を創る』, ジュリスト増刊号, 有斐閣, 東京, p. 113中の表を、厚生省社会・援護局/児童家庭局監修:上掲書を参照の上、筆者一部加筆。
81 「退所判定」をめぐっては、適切な退所指導 - 入所者が社会的に自立・更生できるかをチェックし、退所後の生活上の指導、一般社会に適応し易いような環境を整える等、の業務についても十分考慮される必要があるだろう。
82 図2-2の作成にあたっては、老人保健施設「ケアステーション所沢」の「入所判定委員会」及び「退所判定委員会」の資料を参考にさせていただいた (添付資料1〜4を参照)。同施設の場合、入所・退所判定委員に同図中の各職員 (ただし、臨床心理士及びチャプレン等の聖職者は含まれない) の他に「サブリーダー」と「ソーシャルワーカー」が各2名ずつ参与することで、現場の声が一層反映される仕組みになっている。これら各サービス担当職員の指導事項が、判定の際の意思決定に反映される仕組みになっていることは評価されるべきである。
また、同施設では「老人保健施設利用対象者状況調書」として、(1) 利用希望者の社会生活状況 (生活保護に関するもの、老人クラブ等への所属の有無等)、(2) 住居等の状況 (「専用室の有無」「就寝は布団かベッドか」「トイレは和式か、洋式か、ポータブルか」「持家は一戸建か、あるいはアパート・マンションの何階か」「改造されている場合の内容」等)、(3) 医療状況 (病歴や服薬状況、身体障害の内容、主治医の連絡先や訪問看護を受けている病院名等)、(4) 日常生活状況 (歩行・外出・食事・排泄・入浴・衣服着脱の自立度、及び意思疎通の可能性・趣味嗜好の内容等)、(5) 職業歴及び主な生活歴、といった当事者の状況の多角的な把握への配慮が為されていた。なお、「介護者の健康状態」についても留意されていた。
83 松原一郎:Ibid., pp. 8-12 1993 (平成5) 年4月1日からは、都道府県福祉事務所は生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、精神薄弱者福祉法に定める都道府県又は都道府県知事の行う事務を行い、市町村福祉事務所は上記四法に加えて老人福祉法及び身体障害者福祉法の「福祉六法」全ての事務を行うこととされた。
なお、同書は、こうした事実を受けて、各事務所の名称も「福祉部」・「保健福祉センター」・「総合福祉センター」等と「福祉事務所」色を消したものが増えている、と述べ、この傾向についても「公的サービス提供の見えにくさ」をあらわすもの、と指摘している。
84 三浦文夫:1988,『高齢化社会ときみたち - 21世紀にはどうなる』, 岩波書店, 東京, p161
なお、同書では、老人ホームは「入所者だけの世話をすればよいということではなく、在宅の要介護老人が利用できる施設や機能をもつこと」が重要であるが、それだけではなく「地域の老人福祉の拠点としての役割を果たせるようにしていくこと」が必要である、と述べられる。現行の老人保健施設が、果たして実際に「地域の老人福祉の拠点」としての機能を十分に発揮し得ているかどうかは疑問である。
85 総理府社会保障制度審議会事務局, 『社会保障制度のあらまし』,「老人保健・医療・福祉のあらまし」(last modified Apr, 26, 1999) <http://www.sorifu.go.jp/hoshou/whitepaper/summary/2-9-2.html>
86 厚生省社会・援護局/児童家庭局監修:Ibid, p. 581 「老人保健施設」は1986 (昭和61) 年の「老人保健法」の改正により創設された。そのサービスの提供内容は、「老人福祉施設」とは異なり、急性期の治療の終わった高齢者の家庭復帰への橋渡しの機能を果たすものである。
87 福田知一郎:『特養にまつわるエトセトラ』,「特養現場職員の嘆き」(last modified Aug. 24, 1998) <http://www.biwa.ne.jp/‾mocchi/nageki.htm> 具体的には「ショートステイの際、入所者のADLが如何なるものか分からず、且つ、特にショートステイの初めての夜など、何が起こるか分からない状態で、高齢者を預って何かあれば、自分たち (施設側) の責任になってしまう」という内容である。さらに、「ショートステイというものは、デイサービスとくっつけないといけない。入院してベッドが空いたからといって、その部屋でお泊まり下さいというのはおかしい」という意見がある。勿論、「やはり、デイサービスとショートステイとで、単独の施設をつくるべき」とする意見もある。筆者は、老人福祉施設が、それぞれ単独であることに対して特に異議はない。肝心なのは、各施設間の「連携」が、如何に現場の需要に則して図られるか、という事なのである。
88 厚生省社会・援護局/児童家庭局監修:Ibid, p. 465 なお、限られた資源の効率的、合理的配分と入所者の自立意識の向上を図る考えに基づく「費用徴収基準」は、老人福祉施設のみならず、身体障害者福祉施設、児童福祉施設等の社会福祉施設の内の措置施設 (行政庁の職権による処分によって入所する施設) においても適用される。これについては、老人福祉法第28条、身体障害者福祉法第38条、児童福祉法第56条等でも規定されている。
89 被措置者(入所者本人)費用徴収基準(平成10年7月〜平成11年6月)また、その額が、措置費に満たない場合は、その差額の範囲内で、扶養義務者にも費用徴収がある。暫定措置として、養護老人ホームは140,000円、特別養護老人ホームは240,000円を、当該費用徴収基準月額の上限としている。
90 福田知一郎:『特養にまつわるエトセトラ』,「エトセトラ」(last modified Jul. 8, 1997) <http://www.biwa.ne.jp/‾mocchi/etc.htm>
91 社会福祉事業法2・2・2の2において、「老人福祉法にいう養護老人ホーム、特別養護老人ホーム又は軽費老人ホームを経営する事業」が「第1種社会福祉事業」として定義されている。
92 福田知一郎:『特養にまつわるエトセトラ』,「施設会計にまつわるエトセトラ」(last modified Sep. 1, 1997) <http://www.biwa.ne.jp/‾mocchi/kaikei.htm>
93 有料老人ホームの入居金は1人当たり1000万〜7000万円と高額であり、また、入居後、管理費や生活費として月額5000〜10数万円必要である (川村匡由:1998,『介護保険総点検』, ミネルヴァ書房, 京都, pp. 175-176)。
なお、これまで行政側からのコントロールがほとんど為されないため、契約内容や介護の基準が不明であった同施設に対し、1991 (平成3) 年にシルバーマーク認定のための「有料老人ホーム基準」が定められた。これは厚生省が示した「有料老人ホーム設置運営指導指針」に基づくもので、少なくとも、施設の管理・運営やサービスの契約内容等の「基準」が、行政側から示された点で評価され得るものである。
94 日本弁護士連合会:Ibid., p. 34
95 福田知一郎:『特養にまつわるエトセトラ』,「お先真っ暗…人員配置基準」(last modified Aug. 25, 1998) <http://www.biwa.ne.jp/‾mocchi/topic.htm>
96 なお、この問題に関して、日本弁護士連合会は「人権主体としての高齢者の権利の視点と、憲法25条の趣旨・目的」に照らし、老人ホームの「最低基準改廃の必要性」を訴えている (日本弁護士連合会:Ibid., p. 33)。